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「ケガから学ぶ」って?

落ち込んでいたり、ハマっている時に、なんとか励ましてあげようという、周りからの暖かい言葉にちょっとした勇気をもらうことがある。 かといって、その言葉が全くと言って耳に入ってこない、胸に落ちないことも多少なりあるはず… この「ケガから学ぶ」って言葉もその類いじゃないだろうか? ケガをして精神的に落ち込んでいるとき、 「このつまずきから何かを学びとって、前を向こうよ。お前ならできる!がんばれ!」 ってことなのだろうけど、ケガした当の本人からすると、全く入ってこない。それほど落ち込んでいるから… それまでフルで試合に出ていたのに…例えレギュラーじゃなくとも、いい感じでポジション奪えるとこまで来ていたのに… ケガのせいで、リハビリまで入れると数週間、下手すると数ヶ月は試合や練習に参加できないどころか、いつの間にか自分のポジションにライバルが立っている。 ベンチでそんな姿を見てても、素直に応援なんかできない。 ましてやそれが大事な公式戦だったり、そんでもってチームが順調に勝ち進んでいって、自分が抜けたメンバーで、全国大会なんぞに出ようものなら、もう疎外感すら感じてしまったりと、心情は穏やかではないのが当たり前。 以前、高校サッカー全国常連校の選手が、トレーニングにやってきたことがある。 中学では県でも名を馳せたジュニアユース出身のいわゆるエース。 鳴り物入りで、強豪校サッカー部の門を叩くも、ジュニアユースの頃とは比べものにならないコンタクトプレーの強さに、肉体が耐えきれず、気がつけば、高校3年まで多くの時間をケガと共に過ごす。 高校最後の1年、悔いのないような選手生活を送りたい…悲痛な声に、こっちまで胸が締め付けられる思いだった。 彼のケガは主に両足首で、捻挫と骨折を繰り返していた状態。 それもそのはず、身体全体の柔軟性に欠け、そこにスプリントやジャンプ、ターンなどで、体重の数十倍の負荷がかかる足首がそれに耐えられるはずもない。 たまたまというか、運よく彼が通っていたクラスが遅い時間ということもあり、当時はほぼパーソナルのような感じのトレーニング。 リハビリの要領で、徹底的に体の柔軟性を出し、体の可動性を高めるように進めていった。 そして体軸の安定、キックの時のバランスを保つためのメニュー、体幹メニューも徐々に入れていくことで、それまでのケガが嘘のように無くなっていった。 とはいえ、その時点で高3の初夏、高校サッカーにとって、年2回の全国大会のひとつ、高校総体がもう目の前… 焦る気持ちはわかるが、日々のトレーニングを通じて彼に学んで欲しかったのが、ケガをしないためのコンディショニングづくりと、ケガをするメカニズムについて。 ケガをする時には、必然と偶然が重なるもの。 相手の膝が入る、足を踏まれる、激しく頭を接触する…など、これらは偶然に起こる事故であり、サッカーなどコンタクトプレーがある競技ではつきもの。 でもその偶然に、例えばハムスト(腿の裏の筋肉)が硬い、足首や股関節の可動域が狭い、などの必然性が加わることで、怪我のリスクも、ケガの度合いも何倍にも膨れ上がる。 例えば体が柔らかい選手だと、足首をちょっと捻った程度で済むケガが、足首が硬い選手だと捻挫に、捻挫で済むケガも骨折にまで発展する…ということになれば、これらのケガは、もう起こるべくして起きたケガだ。 気休めでも、ただの励ましの言葉でもなく、だから「ケガから学ぶ」ことが重要なのです。 かくして彼のケガも順調に回復していき、プレーに強さとしなやかさが出てきだすと、持ち前のテクニックも勘を取り戻し、途中出場ながら決勝点を決めるなど、ここ一番での強さをアピールするようになっていくのです。 チームも全国を決め、彼自身も念願の全国の舞台でプレーすることができるようにまで回復したのでした。 とは言え、「ケガから学ぶ」ことは大事だけど、選手たちが、これらのことをケガせずに学び、トレーニングできるようになるのが、僕が一番目指しているところ、と…またもっともらしく語ってみた。

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